このブログでは、栄養不足からくる不調について書いていますが
特に、女性に見られがちな不足として鉄不足があります。
女性に鉄不足が起こりやすい理由
というのも、女性は毎月の生理で鉄分が失われますから
男性や生理のない年代の女性より、鉄不足になってしまいやすい背景があります。
実際、メンタル不調をはじめとする不調が起こりやすい年代って
特に、生理が来るあたりから圧倒的に増えますよね。
また、閉経後の女性が比較的生き生きしているのに対して
体力のあるはずの若い女性のほうがしんどそうな人が多く見受けられるのは
鉄不足も一つの原因として関わっている可能性があります。
「お歯黒」で鉄を摂っていた
また、一昔前は、鉄鍋や鉄製のフライパンを使うことで
微量に溶け出した鉄を摂っていたり、
「おはぐろ」の色素に鉄分が含まれていたりと
なんだかんだで鉄分を(食べ物以外から)摂る機会があったようですが
今ではそういう機会もないですもんね。
(お歯黒はしたくないけど)
体内での鉄のはたらき
貧血にならないように鉄分が大事、ということはよく知られていますが
鉄分が実際に体でどんなはたらきをしているか
よく知っている人は少ないのではないでしょうか。
鉄分は主に、
- 赤血球の原料となり、酸素を運ぶ
- エネルギー(ATP)を産生する
- 脳内ホルモンの原料になる
などのはたらきをしています。
赤血球の材料
一番有名なのが、赤血球の赤い色素
「ヘモグロビン」の原料になっているということですね。
ヘモグロビンは、酸素を全身に届けるはたらきをします。
ざっくり言うとヘム(鉄)とグロビン(たんぱく質)から作られます。
エネルギー(ATP)産生
電子伝達系という、エネルギーサイクルの終盤で
クエン酸回路で作り出したATPをエネルギーに変換するために
大量の鉄が使われます。
例えがあれですが、ゲームやカジノなどで儲かったコインを
換金する両替所のような場所ですね。
(↑が合法かは置いておいて、あくまで例えとして。)
いわば、エネルギー換金所のようなものです。
感情の材料を作る過程でも必要
鉄分は、セロトニンやドーパミンなど
感情を感じるために必要な「脳内ホルモン」が作られる過程で
必要な材料のひとつです。
実は、セロトニンなどの「ほっとする」感情を働かせる
脳内ホルモンを体の中で合成するためにも
鉄分が使われています。
主な鉄の働きを挙げましたが、
こうして見ると、貧血だけでなく
色々なものに鉄分が使われているのがわかりますね。
鉄不足で起こりがちな不調
「貧血でフラフラする」以外にも
鉄不足で起きる不調には、実は色々な特徴があります。
鉄分が不足すると、先ほど述べたはたらきの逆、
つまり…
- 赤血球の原料となり、酸素を運ぶ
→貧血・酸欠 - エネルギー(ATP)を産生する
→疲れやすい、低体温など - 脳内ホルモンの原料になる
→気分が落ち込む、やる気が出ないなどのメンタル不調
などの不調に陥りやすくなってしまいます。
以下に詳しく解説しますね。
貧血・血液が薄くなる
ヘモグロビンは、ヘム(鉄)とグロビン(たんぱく質)から作られます。
つまり、鉄またはたんぱく質が不足すると
赤血球の成分が不足して、いわゆる血が薄い状態になってしまいます。
ヘモグロビンが少なくなると
「貧血」と診断されるまでいかずとも、赤血球自体の大きさが小ぶりになったり
赤血球ひとつひとつの中身の容量をスカスカにすることで
なんとか数をカバーしようとします。
(ヘモグロビン値が正常な人でも、
貧血の前兆的に、部分的に下がるデータがあります)
血液が薄くなることで
組織が酸欠になる
その「薄い血液」を全身に回すので
組織が欲しがる量の酸素が十分に行き渡らず
組織が酸欠状態になっていることがあります。
「貧血」というと、せいぜい立ちくらみやめまいなどかと思うかもしれませんが
実は、よくある不調が血液が薄くなることによる二次的な不調である可能性もあります。
具体的には、頭痛や耳鳴りなど
薄い血液を全身に頑張って回すので心臓にも負担がかかってしまうので、
実際に鉄不足が疑われるデータの方には不整脈持ちの方も多いです。
(これらの不調の原因が100%鉄不足だと断定するわけではありません。あくまで可能性のお話です)
エネルギー不足
ATPをうまくエネルギーに変換できず
エネルギー不足になりやすくなってしまいます。
寒がり・低体温は鉄不足あるある
疲れやすいなどもそうですし
エネルギー不足=熱産生しにくくなるので
体温が低い、寒がりな人が多いのも特徴です。
若い方で、「自分は平熱が低い」と自慢(?)している人や
特に女性では夏なのに寒がっている人を多く見かけますが
典型的な鉄不足の可能性が高いでしょう。
かぜをひいたときに体温が上がって病原体をやっつけるように、
人間の平熱が36.5℃であることにも意味があるので、
免疫維持のためにも体温は維持したいものですね。
メンタル不調
「ほっとする」セロトニン、やる気を起こすドーパミンなど
感情を働かす「脳内ホルモン」を体の中で合成するために、鉄分が使われています。
つまり、鉄分が足りないと
脳内ホルモンが合成過程の途中で止まってしまい
- ほっとする(ことができない)
→不安感や恐怖感、過剰に心配しすぎる - やる気を出す
→やる気が出ない
などと言ったメンタルの不調が現れやすくなってしまいます。
※こちらの記事↑にも書きました
鉄分の摂り方
よほど意識的に鉄分を摂っていない限りは、
月経のある女性はほぼ鉄不足と言っても過言ではありません。
これは日本での問題だけではなく、
海外でも既に一昔前、鉄不足が深刻に問題視されたことがあり
鉄を配合した小麦粉が流通したりしたことがあるそうですよ。
鉄分を多く含む食べ物
鉄分が豊富に含まれるのは、
赤身のお肉やお魚、貝類など。
牛や羊のお肉が鉄分をたくさん含有しています。
吸収の良いヘム鉄が摂れる
動物性食品がおすすめ
特に、動物性のお肉に含まれる鉄分はヘム鉄と言って
吸収効率がよく、体に利用されやすい「即戦力」の形の鉄分なのでオススメです。
ちなみに「ほうれん草好きだから大丈夫!」という方もいるかもしれませんが
ほうれん草で鉄分を充足させるには、
1日にバケツ4杯分のほうれん草を食べる必要があるそう。
それくらい、鉄分を食事から完全に摂るというのは
実は難しいことなのです。
おすすめ鉄サプリ
ということで、
1日の必要量を食事から十分に摂るだけでもけっこう大変なので、
現時点で既に先に述べたような鉄不足が思い当たる方や
お肉があまりたくさん食べられない、ベジタリアンの方は
サプリで補ってあげることもおすすめです。
ところで、現在出回っている鉄サプリには
二価鉄(非ヘム鉄:Fe2+)と三価鉄(ヘム鉄:Fe3+)があります。
ここで書くとちょっと説明が長くなるので、
鉄サプリの種類と選び方については、別の記事で詳しく解説しています。
鉄サプリが効かない原因
鉄サプリを飲んでいても効かない、という人が一定数います。
実はわたしもサプリを始めたころはそうで
かえって顔色も体調も悪くなってしまったことがありました。
サプリ自体より
まず吸収できる体への改善を
一説にはキレート鉄が悪いとか、ヘム鉄の量が少なすぎるとか論じる専門家もいますが
これは(自らも体験したわたしが思うに)、サプリ自体が悪いのではなく
そもそも体がサプリを吸収できる状態に整っていないことのほうが大きいと思っています。
特に、お腹が弱い方やアレルギー体質、
それまでベジタリアンだったり野菜信者だった方は
消化吸収が弱っていたり、腸が荒れていることにより
栄養の吸収が妨げられていることも少なくありません。
実際、サプリが効きにくいという方には
便秘や下痢体質など、お腹が弱い方や
パンや麺、乳製品(グルテンやカゼイン)など
腸の刺激になってしまいかねない食材が大好きで常食している人がとても多いように見受けられます。
鉄サプリは、ビタミンやミネラルなどと比べて
吸収されにくく、腸を荒らしてしまいやすい成分です。
とにかく「鉄分が体に良い」からと、
あまり調べずに、体が整った状態になる前に摂ってしまうと
かえって体の負担にもなりかねないので、体を整えることが先決です。
煮炊きに鉄を溶かす方法も
ちなみに先ほど、鉄鍋から溶けた鉄を摂るということを書きましたが
こういう鉄の塊、「鉄たまご」を煮炊きに入れて鉄を摂るというのもアリですよ。
鍋やフライパンのように、重たかったりサビたりもせず
気軽に使えるのも良いです!
まとめ:不足しがちな鉄分
正しく知って適切に
ということで、鉄分が不足しがちな人の特徴と
起こりがちな不調、鉄の摂り方について解説しました。
不足しがちな栄養成分ではありますが、
体への負担を少なくして鉄分を補給するには、とにかく摂ればいいというわけでもないので
適切な情報を知って、まずは体の土台を整えてから実践できるとベストです!
鉄サプリを飲んでいるけどいまいち体調が良くないという方も
上記の記事を参考にしてみてくださいね。
記事の内容について
この記事は医療従事者が執筆していますが、あくまで個人の経験・体感をもとに書いたものであり、特定の疾病の診断や治癒、すべての方へ効果効能を保証するものではございません。
掲載内容の実践にあたっては一切責任を追いかねますので、内容をよく吟味のうえ、自己判断でお願いいたします。