どうしてメンタルのブログなのに
料理や栄養の話を書いているかというと、理由があります。
今日はその理由について、
現役医療従事者であり、自分自身もメンタル不調に長年悩んできた立場から書いてみます。
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ポジティブ思考や心の持ちようでは
回復できない理由
「ネガティブにならず、ポジティブに考えよう」
「笑っていれば、気持ちも前向きになる」
「感謝しよう」「誰にでも笑顔でいよう」
とは、よく言われますよね。
メンタルに不調を抱えたことのある方であれば
まわりの人からこう言われたり、実際にこのような努力をされたことが
少なからずあるのではないでしょうか。
ですが、どうでしょう。
自分の気持ちに反してポジティブになってみたり
感謝だの笑顔だの、やってみてどうにもならなかったからこそ
今こうして悩んで、このブログを見に来て下さっている方も少なくないはずです。
「ポジティブ」で治るなら
今頃困ってないし病院も必要ない
こんな気持ちの持ちよう一つで解決するならば
誰しも、わざわざ人に弱みを晒して悩みを話したり助けを求めずとも
自分で勝手に回復できるはずですし
病院に行きませんし、薬も要りませんよね。
精神科やメンタルクリニック、心療内科という診療科が独立して存在し
そこに多くの人が押し寄せていることが、なによりの証拠です。
他人に元気を分けてもらっても
根本的な解決にはならない
わたしも病んでいた経験があるのでよくわかるのですが
せっかく勇気を出して人に助けを求めたのに、「ポジティブ」で片付けられてしまった虚しさ。
自分が辛いのに、この場に及んでも「笑って、元気出して」と、相手のご機嫌取りを求められる苛立ち。
努力してみたけど前向きになれない自分に対する不甲斐なさ。
わたしはあなたじゃないし、あなたはわたしじゃない。
かえってこういう自責や失望感が、落ち込む気持ちを助長してしまうことすらあります。
薬も優しさも一時的なもので
すぐに落ちる自分に戻ってしまう原因
また、もし仮に優しい言葉や励ましの言葉をかけてくれて、一時的に暖かい気分になったとしても、
一人になれば、きっとまた同じネガティブ思考がグルグル襲ってくるループに戻ってしまうのではないでしょうか。
何かのトラブルに見舞われて、解決策が見えているのであれば別ですが
理由もなく落ち込んでしまうのであれば尚更です。
逆の立場で、あなたがいくら頑張って励ましてみても
いつまでも落ち込んでネガティブなことを言っている人もまた、身近に一人二人はいませんか?
つまり、いずれにしても
他人から元気や励ましを分けてもらったところで
「理由なく落ち込んでしまう」ことの根本的な解決とは言いにくいわけです。
気分の落ち込みから回復するためには
「心の体力」が必要
人には元々、
ある程度の自然治癒力、自己回復能力が備わっています。
体のケガに例えるとわかりやすいですが
少し切り傷や擦り傷をしたくらいで、痛みと血が止まらなくなっては大変ですし
多少細胞が傷ついたからといって、すぐにガンになっては、生きることが相当大変になってしまいますから
多少の傷やダメージを自己修復する力が、体には備わっているのはきっと、想像ができるのではないでしょうか。
(中にはこの機能がうまく働きにくい病気も存在しますが、
ここではそのようなご病気で苦しまれている方をけなしているわけではありません)
しかし、擦り傷が治りやすい人もいれば、一方で
ケガが治る前に傷口が化膿して感染症を起こしてしまいやすかったり、命を落としてしまう人もいます。
(わたしも傷が治りにくい体質です)
あの人は平気なのに、
自分だけ落ち込んで引きずってしまう理由
そんな傷の治り方のように、心もまた同じで
一時的な落ち込みや、たまたま遭遇したイヤな出来事であれば、
一晩寝たり、他に楽しいことがあれば、忘れられることもあるでしょう。
また、同じくようなイヤな出来事に遭遇しても
全く気にしない人もいれば、心がえぐられるような不快感や怒りに襲われる人もいます。
この差はどこにあるのでしょうか?
心の傷が治りにくい人は
心の自己回復力が弱ってしまっている
冒頭の「前向きに笑っていればいい」と言える人と、そうなれない人では、
もちろん、経験した痛みそのものの大きさや、元々の性格も違えど
決定的に違うのは、受け止められる痛みの許容量という
「心の抵抗力」の違いではないかと思っています。
例えば痛みや騒音などの刺激を受けても
ものすごく苦痛の人もいれば、
「言われてみればそうだね」くらい気にしていない人もいます。
- 薬を飲んでも、環境を変えてもなかなか良くならない
- いつまでも暗い気持ちを引きずってしまう、
- イヤなことがあったわけじゃないのに、朝から気分が落ちている
そんなメンタル不調の背景には、少なからず
「心の抵抗力」が落ちてしまっている可能性があるのではないかとわたしは考えていて
それをこのブログでは「心の栄養失調」と呼んでいます。
心の体力不足は
なぜ「栄養失調」なのか
ところで、
どうして「心の抵抗力」が、いきなり「栄養失調」に直結するの?
「この飽食の時代に栄養失調なんて、ありえない」
そう思われる方も多いでしょう。
たしかに、現代では
ほとんどの人は、カロリーは足りています。
しかし、カロリー「しか」摂れていない人が圧倒的に多いのが現状です。
安さと引き換えに失われた栄養価
長引く不景気、原材料の高騰による人工的な材料、
精製や味付けなど、美味しく錯覚させる技術などが発達した結果、
「生命活動に必要な栄養を摂る」という本質が置き去りになり
それよりも、安い原料を使って利益を上げること、節約すること
日持ちや保存性をよくすること、美味しく「感じる」ことが、知らず知らずのうちに優先されてきました。
買う側も、そんなことには気が付かず
安さや美味しそうなパッケージに飛びついた結果
行きつく先は、栄養価を差し置いてコスパの良い食事
つまりは糖質過多になっていったわけです。
(ここで言う「パフォーマンス」は、空腹を満たすためのカロリーのこと)
糖質制限を始めてみると
普段甘い物を摂っていなかった人でも
日常の食事から糖質を避けることがいかに大変なことか、
いかに糖質ばかりを摂ってきたかに気が付きます。
そのくらい、普段食べるものは糖質(炭水化物)ばかりで溢れていて
言い換えると、糖質以外の栄養は足りていないことが多いのです。
断糖肉食に適する食材や、無添加の食材・調味料は探してみると意外とあるのですが
安さだけに囚われていると、わざわざ選ぼうとは思わないのですしね…
カロリー=栄養ではない
話は戻り、
「カロリー=栄養」ではありません。
わたしたちは授業で「人間の唯一のエネルギーはグルコース」と習いましたが
砂糖「だけ」を摂っていれば良いわけではありません。
それならば、最初からあれこれ料理なんてせず、
砂糖の塊だけ食べていれば良いわけですからね。
体は日々作り替えられている
わたしたちの体は、
一度完成したら永遠にメンテナンスの要らない機械ではなく
日々体の成分が入れ替わっている「生もの」です。
カロリーというガソリンだけを入れ続けているのは
修理していないボロボロの車にガソリンを入れ続けているような、
壊れた電子機器を充電し続けているようなもの。
いずれ、細胞という体の部品は劣化して
動きが鈍くなったり、故障したりしてしまうので
たんぱく質やビタミンなどの「部品」や「潤滑油」も日々補う必要があります。
感情の原理は
脳細胞の化学反応
ひとたびメンタルの話になると、
途端に、神だの宇宙からの啓示だとか、スピリチュアルだとか
怪しいイメージや偏見がつきまとったり
逆に、冒頭のポジティブ思考のように、根性でなんとかなるものだと、軽く見られがちだったりします。
メンタル改善に
縁起担ぎやスピリチュアルは不要
しかし、メンタルを良くするのに、
信仰もスピリチュアルも縁起担ぎも必要ありません。
ある意味夢を壊すようかもしれませんが、
感情の変化も、「細胞の化学反応」です。
食生活を疎かにしていると
血管がボロボロになったり、臓器のどこかが故障したり…
ということは、理解できる方が大半ではないでしょうか。
他の臓器と同様で
気持ちや感情を作っている元も、脳の中の神経細胞の化学変化であり
脳内ホルモンという化学物質の受け渡しです。
メンタル不調は、その脳細胞の化学変化の過不足にすぎません。
笑えない、喜べないのは
体の材料不足
では、メンタル不調では
具体的にどんな化学反応の過不足があるかというと
化学反応のための材料が足りていないのこと圧倒的に多いということがわかってきたのです。
つまり、感情を感じようとしても「感情の材料」が足りないので
満足感を感じられなかったり、表情や感情変化が乏しくなったりしてしまう。
その材料というのが、たんぱく質や脂質で、
材料を作り出すためにはミネラルやビタミンも必要。
その合成経路の材料が足りなかったり、途中で生成過程が止まってしまえば
「感情の材料」は十分に作られず、不足してしまうというわけです。
これが、わたしがメンタル不調のことを
「心の栄養失調」と呼んでいる理由です。
一時的な自分満たしは
根本的解決にならない
楽しもう、喜ぼうと頭で思っていても、そもそも体にある材料がとても少ないので
たとえば自分満たしのスイーツを食べても、その時は良くてもまたすぐ元に戻ってしまう。
そんなわたしも、自分へのご褒美として高級ホテルに行ったけれど
ちっとも楽しめなかった、ということがありました。
冒頭の話に戻り、ポジティブだの努力云々でどうにかできるものではないし
もし仮に無理して絞り出せたとしても、ないものを無理して絞り出すのは、根本的な解決にはなりませんよね。
精神科の薬と栄養改善の違いとは
メンタルの薬のはたらき
精神科で処方される薬のはたらきは、大まかに言うと
この、体の中で少なくなった「感情の材料」をリサイクルして
回転率を上げようとする役割をしています。
(薬によって作用機序は異なりますので、あくまで一例です)
もちろん、これはこれで「エコ」ですが(?)、根本から補われるわけではありません。
体の材料は永遠にあるわけではなく、しかも、ただでさえ少ない状態。
徐々に減っていくにつれて、だんだん薬は効きにくくなってしまったりします。
その感情の材料や、材料を作るために必要なビタミンやミネラルを
食べることで量を増やして根本から補おうというのが、「栄養を摂る」という働きかけなのです。
薬と栄養を併用することもある
かと言って、薬がダメというわけではなくて
精神科の薬と、栄養で補うこととの、どちらが良い・どちらが悪い、という
0か100かと結論付けるつもりはありません。
栄養療法を取り入れているクリニックでも
必ずしも薬を一切使わない、というわけではなく、
場合によっては、精神安定剤などのの薬を併用することもあります。
サプリを一粒飲んだからっていきなり劇的に変わるわけではありませんから
薬を補助輪にして不安感や恐怖感を和らげながら栄養改善をして
徐々に薬を減らしていくことも、実際の診療では行われています。
※実際の治療方針は医療機関や受診者様の病状・症状によって異なります。
栄養を摂ることで
「感情の材料を補う」メリット
ただ、どんな栄養が足りていないかを把握して
食事やサプリなどで意識的に取り入れることのメリットは
「体に積み上がる」こと。
小銭貯金を積み重ねるように、体や心に「貯金」ができるので
すぐに体感がなかったとしても、少なからず体にとってプラスの積み上げができてきて
その結果、打たれ強い「心の体力」が徐々に培われるわけです(^^)
心の筋トレのようなものでしょうかね。
結論:
根拠のないポジティブ精神論より
体に栄養を積み上げるほうが確実
材料が足りないなら、補う。
根本はとてもシンプルですよね。
感情論で自分の気持ちに逆らって無理に奮い立たせるよりも、
前向きになれない心持ちを責めてしまうよりも、
よっぽど建設的なはたらきかけだとわたしは思うのです。
続編:感情の材料と
不足すると起きること
具体的にどんな栄養が必要なのか
感情の材料って、何?というかたは
こちらの続きの記事↓もどうぞ。
記事の内容について
この記事は医療従事者が執筆していますが、あくまで個人の経験・体感をもとに書いたものであり、特定の疾病の診断や治癒、すべての方へ効果効能を保証するものではございません。
掲載内容の実践にあたっては一切責任を追いかねますので、内容をよく吟味のうえ、自己判断でお願いいたします。