栄養のことを学んでいると、その人を見ただけで
「この人は○○が足りていなそうだな」と思うことがあります。
(正確に測ったわけではないので、経験知というか勘もありますが)
ひょろっと細くて、猫背で声が小さく、生気が感じられない若い男性を見ると
「この人はご飯代わりに菓子パンとかインスタント麺を食べていそうだなぁ。」
と思ったりします。
こういう人、最近よく見かけますよね。
これは必ずしも本人が悪いのではなく、現代の食のしくみや売り出し方が原因でもあります。
食生活がナヨナヨ男子を作る
以前の記事で、
若い方が質的栄養失調に陥ってしまいやすい理由を解説しました。
お金も時間もないと糖質過多になりがち
特に、過去のわたしもそうでしたが、
一人暮らしの若い人は料理に慣れておらず、
そのうえお仕事や学業が忙しくて料理どころではない。
となると、口当たりの良い、安くて手っ取り早くお腹が満たせる
菓子パンやインスタント食品などで済ませてしまいがちですよね。
加熱調理も不要だし、
自分で作って味付けや火加減で失敗するより、よほどおいしいし
洗い物や生ごみもほとんど出ないからラクですしね。
…という気持ちはめちゃくちゃわかるのですが、
こうした糖質過多の食べ物で栄養が偏ってしまう原因は
実は、栄養の「不足」だけではないのです。
栄養を消化吸収するためにも
栄養が必要
炭水化物メインの食事が続くと質的栄養失調につながるのは、
単純にお肉やお魚からとれる栄養が不足するだけではなく、
体にある栄養の消耗を加速することも原因の一つです。
栄養の吸収にも、栄養が必要。
たんぱく質や脂質を吸収するためにも、それぞれ必要な栄養がありますが
特に、炭水化物(糖質)の消化吸収には
- ビタミン(主にビタミンB1)
- 亜鉛
などが関わっています。
足りない+使われすぎで栄養不足に
わたしも過去に毎日コンビニおにぎり生活をしていましたが
慢性的に糖質過多な食生活をしていると、
栄養が偏ってしまうばかりか、
糖質の消化吸収に必要な栄養素ばかりがたくさん使われ続けて
その結果、栄養不足に陥ってしまうのです。
必要な栄養が
食べやすさのため取り除かれている
ちなみに、わが国の炭水化物の代表格、お米には
元々、胚芽(はいが)というパーツがくっついています。
一般的な白ごはんでは、この胚芽が取り除かれていますが
実はこの胚芽には、ビタミンB1やナイアシンなどが豊富に含まれています。
→参考データ:胚芽精米の栄養分
つまり、お米を消化するために必要な栄養素が、
元々、お米自体にくっついているのです。
自然ってうまくできていますよね。
なのに、現代の食卓に並ぶ白米は「精製」といって
口当たりをよくするために、元々自然に備わっている栄養を
取り除いてしまっているという事実もあるのです。
ビタミンB1、亜鉛が不足すると
では、菓子パンやインスタント食品のような
精製糖質ばかりをとり続けていると
具体的にどんな不調が現れやすくなるかというと…
- 疲れやすい、常にだるい
- イライラしやすい
何もないのに不機嫌になってしまう - 勉強しても頭が回らない、
頭に入ってこない - 以前のように性欲が湧かない
こういった不調がある場合は
もしかすると、単純に疲れているだけではなく
食べているものが偏っているために、栄養が消耗してしまっているかもしれません。
けっこう思い当たる方は多いのではないでしょうか。
もう少し詳しく解説しますね。
ビタミンB1が欠乏すると
ビタミンB1は、一連の糖質の代謝に必要な栄養成分。
疲労物質、乳酸の代謝にも関わっていますので
ビタミンB1が不足すると、乳酸が分解しきれず蓄積し、疲れやすくなったりします。
神経系のはたらきにも使われていますので
ビタミンB1が不足すると、イライラしたり、
頭が回らなくなったりする原因にもなります。
重篤な欠乏では意識障害も
欠乏に近いくらい不足が深刻な場合、意識もうろうとして動けなくなり
ビタミンを点滴したら意識が戻った、ということも稀にあったりするのです。
(しかし、ビタミンについて理解の深い先生はまだ少ないので
一般的な病院では、ブドウ糖を点滴されて余計にビタミンを消耗させ
なんでだろう…と延々と検査しまくり、議論し合っているのが現実です)
軽視されがちだが
実は身近なビタミンB1欠乏
「飽食の時代でビタミンが足りなくなるわけない」
と思う方も多いかもしれませんが、
実際、「疲れやすい」とか、「些細なことでイライラしやすい」と訴える人って、多いですよね。
今までわたしも医療機関や健診で働いて何万人もみてきましたが、
むしろ、日本人のほとんどが慢性的なビタミンB1不足と言っても
決して大げさではないのではないか?というくらいに感じます。
ビタミンB1が豊富な食材
ビタミンB1は豚肉やうなぎなどに豊富に含まれますが
慢性的に糖質を摂っている方であれば、相当量消耗していると思われますので
サプリで補ってあげるのが早道でおすすめです。
↑は1ボトルでごはん1食分程度。
食べ物をあれこれ調達して調理するより、手軽にB1が摂れます。
亜鉛が欠乏すると
亜鉛は主に、細胞分裂が盛んな組織ではたらいています。
細胞分裂が活発な組織は
具体的には、髪の毛や性腺、皮膚など。
また、感情を作る材料、脳内ホルモンを合成するためにも亜鉛が使われます。
亜鉛が性欲や精力に関わっていることは、
特に男性であれば聞いたことがあるかもしれませんね。
他には、亜鉛が不足すると、爪が薄くなったり、
新しい皮膚ができにくくなるため、傷が治りにくくなったりしやすくなります。
亜鉛欠乏の症状として味覚障害も有名ですが、
味覚を感じにくくなるために、より味の濃いものを食べたくなる、という悪循環にもなりかねません。
亜鉛サプリは吸収されにくい
ところで、亜鉛は消化吸収が整っていない人がいきなりサプリを飲んでも
吸収されにくい可能性があります。
iHerbの亜鉛サプリのレビューにも、
吐き気や腹痛が起きたと書いている方もちらほら。
特に、胃腸が弱い方は
まずは、糖質の摂りすぎなど、過剰な消耗を食い止めることから始め、
胃腸の消化吸収を整えて、少量からサプリを試してみることをおすすめします。
まとめ:
甘いものや精製糖質は手軽に食べられる反面、
摂りすぎると、栄養不足だけではなく
体の栄養分をすり減らしてしまうデメリットがあるということと
具体的にどんな不調があるか、例をご紹介しました。
実は、特別な食材やサプリを摂るよりも
体内での過剰な消費を食い止める方が、今日からできる身近な対策です(^^)
思い当たるかも…という方はぜひ、
普段食べているものを見直してみてくださいね。
まずは普段の食べ物にプラス一品
とはいっても、
今まで忙しかったり、料理に慣れなかった方が
いきなり食生活をがらりと変えるのは、なかなか難しいかもしれません。
そういう方は、まずは
菓子パンやインスタント麺に
唐揚げや卵焼きなどをプラス一品してみる、
お肉や魚のフライをサンドしたバーガーにしてみるだけでも、
栄養のバランスは変わりますよ!
カキフライは亜鉛も豊富。
さらに興味が湧いてきた、という方はぜひ
他の記事も参考にしてみてくださいね。
記事の内容について
この記事は医療従事者が執筆していますが、あくまで個人の経験・体感をもとに書いたものであり、特定の疾病の診断や治癒、すべての方へ効果効能を保証するものではございません。
掲載内容の実践にあたっては一切責任を追いかねますので、内容をよく吟味のうえ、自己判断でお願いいたします。